
人口減少が進むこれからの時代、中小企業も事業の多角化が必要となってくると考えられます。多角化経営を進める際に、新しい事業のウェブサイトをどのように構築するかは非常に重要な意思決定となります。
Webマーケティングの専門家として、新しい事業のホームページのあり方について、メリット・デメリットを交えながら解説していきます。
独自ドメイン?サブドメイン?新規事業のホームページ、どう作る?
新規事業のウェブサイトを作る際、大きく分けて以下の2つの選択肢があります。
- 既存のコーポレートサイト内にページとして追加する
- 既存のコーポレートサイトとは別に独立したサイトとして作成する
それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。
1. 既存のコーポレートサイト内にページとして追加する
新しい事業に関する情報を、既存のコーポレートサイト内の特定のセクションやページとして追加する方法です。
メリット
- 初期コストと運用コストの削減
新規でドメインを取得したり、CMSを導入したりする費用がかからないため、初期費用を抑えられます。また、既存サイトの運用体制をそのまま利用できるため、日々の更新やメンテナンスのコストも削減できます。 - 既存サイトの信頼性の活用
既存のコーポレートサイトがすでに持っている信頼性やブランド力を、新しい事業にも引き継ぐことができます。これにより、新規事業へのユーザーの心理的ハードルを下げやすくなります。 - SEO効果の恩恵
既存サイトがすでにGoogleなどの検索エンジンから評価されている場合、その評価を新しい事業のページにも引き継ぎやすくなります。結果的に、新規事業のページが検索結果に表示されやすくなる可能性があります。 - ユーザーの回遊性向上
既存サイトから新規事業のページへの導線を設けることで、既存サイトを訪れたユーザーが新しい事業にも興味を持つきっかけを提供できます。
デメリット
- ブランドイメージの希薄化
新規事業と既存事業のコンセプトが大きく異なる場合、同じサイト内に混在させることでブランドイメージが曖昧になる可能性があります。ユーザーにどちらの事業に注力しているのかが伝わりにくくなることもあります。 - コンテンツの制約
既存サイトのデザインや構成に縛られるため、新規事業のコンテンツを自由に表現しにくい場合があります。また、情報量が増えすぎるとサイト全体の構造が複雑になり、ユーザーが迷いやすくなる可能性もあります。 - SEO評価の分散
新規事業のコンテンツが既存サイトの一部とみなされるため、特定のキーワードで上位表示を目指す際に、既存サイトの他のコンテンツと評価が分散してしまう可能性があります。 - 専門性の欠如
新規事業に特化した深い情報や、特定のターゲット層に合わせたきめ細やかな情報提供が難しくなる場合があります。
2.既存のコーポレートサイトとは別に独立したサイトとして作成する
新しい事業のホームページを、既存のコーポレートサイトとは全く別の独立したサイトとして作成する方法です。
メリット
- 強力なブランドイメージの確立
新規事業独自のドメインとデザインを持つことで、既存事業とは異なる明確なブランドイメージを構築できます。これにより、ターゲット顧客に対して事業の専門性やユニークな価値を強く訴求できます。 - ターゲット層への最適化
特定の顧客層に特化したデザイン、コンテンツ、ユーザー体験を自由に設計できます。これにより、訪問者のエンゲージメントを高め、コンバージョン率の向上が期待できます。 - SEO戦略の独立性
新規事業のSEOを既存事業の制約なしに最適化できます。特定のキーワードや市場での上位表示を目指しやすく、既存サイトのSEO状況に左右されません。 - 柔軟なサイト運用と技術選定
既存サイトのシステムやデザインに縛られることなく、新規事業に最適なプラットフォームや最新技術を導入できます。これにより、将来的な機能拡張や改善が容易になります。 - 明確な事業焦点
新規事業の情報を既存事業と切り離すことで、訪問者にとっての混乱を避け、その事業への集中度を高めることができます。
デメリット
- 初期コストと運用コストの増加
新規でドメイン取得、サーバー契約、サイトのデザイン・開発を行うため、初期投資が最も大きくなります。また、独立したサイトとなるため、その後のコンテンツ更新やメンテナンスにも別途リソースが必要となります。 - 信頼性・認知度の獲得に時間
既存のコーポレートサイトがすでに持つ信頼性や認知度をゼロから築き上げる必要があります。ブランド認知を高め、集客効果を上げるには、時間と積極的なマーケティング努力が不可欠です。 - SEOの初期立ち上げ期間
新規ドメインは、検索エンジンからの評価がまだ低いため、検索結果の上位に表示されるまでには時間がかかります。初期段階での集客には、SEO以外の広告戦略やSNS活用がより重要になります。 - ブランド間の連携管理
複数の独立したサイトを運用する場合、それぞれのブランドメッセージやデザインの一貫性を保つための管理が必要になります。
独自ドメイン?サブドメイン?既存ドメインの階層下?
新しい事業のホームページを作成することが決まったら、URLをどうするか(ホームページをどこに置くか)、ドメインの取得方法についても検討が必要です。これには主に3つの選択肢があります。
- 新規ドメイン(別ドメイン)を取得する
- サブドメインを利用する
- 既存ドメインの階層下に配置する(サブディレクトリ)
それぞれの選択肢が、新しい事業のSEOやブランドイメージにどう影響するかを見ていきましょう。
1. 新規ドメイン(別ドメイン)を取得する
新規事業のために全く新しいドメインを取得する方法です。たとえば、既存事業がexample.co.jpなら、新規事業でshinjigyo-〇〇.co.jpのようなドメインを取得します。
メリット
- 強力なブランド構築:
新規事業の独自性を際立たせ、独立したブランドイメージを確立できます。既存事業と明確に区別したい場合に最適です。 - ターゲット層に最適化: 新規事業の特定のターゲット層に合わせたデザインやコンテンツを、完全に自由に作成できます。これにより、ユーザーエンゲージメントの向上が期待できます。
- SEOの独立性: 新規事業のSEOを既存事業から完全に独立して最適化できます。特定のキーワードで上位表示を目指しやすく、既存事業のSEO状況に左右されません。
デメリット
- 初期コストと運用コストの増加: ドメイン取得費用、サーバー費用、サイト制作費用など、初期投資が最も大きくなります。また、運用も既存サイトとは別で行う必要があり、手間とコストがかかります。
- 信頼性・認知度の獲得に時間: 既存サイトがすでに持つ信頼性や認知度をゼロから築き上げる必要があるため、時間とマーケティング努力が必要です。
2. サブドメインを利用する
既存ドメインを基盤としつつ、新規事業の識別子を付加したドメインを作成する方法です。例: shinjigyo.example.co.jp
メリット
- 既存ドメインの信頼性の活用(限定的): 既存ドメインがある程度の信頼性を持っている場合、その恩恵を間接的に受けられる可能性があります。しかし、これはサブディレクトリほど直接的ではありません。
- 比較的安価: 新規ドメインを取得するよりも、初期費用や管理費用を抑えられる場合があります。
- 管理のしやすさ: 複数の事業を同じドメインの傘下で管理できるため、管理体制を比較的シンプルに保てます。
デメリット
- SEO評価の独立性: Googleは基本的にサブドメインを独立したサイトとして評価する傾向にあります。そのため、メインドメインのSEOパワーがサブドメインに直接的に引き継がれることは期待できません。サブドメイン独自のコンテンツや被リンクで、一からSEO評価を築いていく必要があります。
- ブランドイメージの混同: 既存事業と新規事業の関連性が低い場合、サブドメインを利用することでユーザーに混乱を与えてしまう可能性があります。
- メインドメインの影響リスク: メインドメインがGoogleからペナルティを受けた場合など、その悪影響がサブドメインにも波及するリスクがゼロではありません。
3. 既存ドメインの階層下に配置する(サブディレクトリ)
既存ドメインのURLパスの下に新規事業のページを作成する方法です。例: example.co.jp/shinjigyo/
メリット
- SEO効果の最大化: 既存ドメインが持つSEOパワー(ドメインの信頼性、被リンク、オーソリティなど)を最も直接的に引き継ぐことができます。既存サイトに十分なSEO資産がある場合、新規事業のページも検索結果に表示されやすくなります。
- 運用コストの削減: 既存サイトのシステムやインフラをそのまま利用できるため、運用コストを抑えられます。
- ユーザーの回遊性: 既存サイトのユーザーがスムーズに新規事業のページにアクセスしやすく、回遊性を高められます。
デメリット
- 独立性の欠如: 新規事業が既存事業の一部と見なされやすく、独立したブランドイメージを強く打ち出しにくいです。
- 情報の整理が複雑に: 事業数が増えたり、それぞれの情報量が多くなったりすると、サイト構造が複雑になり、ユーザーが求める情報にたどり着きにくくなる可能性があります。
- 既存サイトの影響: 既存サイトのデザインやブランドガイドラインに縛られやすく、新規事業に特化した柔軟な表現が難しい場合があります。
弊社の事例紹介
リクトは「新規集客とリピート戦略で企業価値と売上・利益を最大化」させるサービスを軸に展開しています。
主なサービスとしては、ホームページ制作×Webマーケティング×営業DX支援×Webシステム構築・販促物制作ですが、これらとターゲットが異なる採用サイトや、メインサービスと少し提供軸が異なるオプション的なサービスなどは「新規ドメイン×独立サイトパターン」で立ち上げています。
新規ドメイン×独立サイトパターン
- 求職者向けの採用専門サイト
https://lct-job.com/ - オウンドメディア構築+編集長育成サポートのPiscatio(ピスカチオ)
https://piscatio.media/ - SEOのためのサイト画像最適化サービスSIO(エスアイオー)
https://sio.systems/ - 住宅模型造形サービスのハウジングプリント3D
https://housing-print3d.jp/
一方で、ホームページ制作サービスの一環となる、ホームページ診断サービスのページやWebマーケティングサービスの一環となるSNS運用代行サービスのページは「サブディレクトリ×コーポレートサイト内にページとして追加」で作成・運用しています。
サブディレクトリ×コーポレートサイト内にページとして追加パターン
- ホームページ診断サービス
https://www.lct.jp/website-analysis/ - SNS運用代行サービス
https://www.lct.jp/sns-posting-agency/
まとめ:最適な選択は事業の特性と未来のビジョン次第
新しい事業のホームページ戦略は、その事業の特性、ターゲット層、予算、そして何よりも将来的なブランドのビジョンによって決まります。それぞれの選択肢にはメリットとデメリットがありますが、特に新規事業を大きく育てていくことを考えるなら、独立した戦略が有利になることが多いでしょう。
各選択肢の特性
- 既存サイト内ページ/サブディレクトリ: 既存事業との関連性が高く、迅速な集客を目指す場合は、既存サイトのSEO資産を活かせるこの方法が有効です。ただし、コンテンツのボリュームが増えるとユーザーの回遊性が悪化し、ターゲットが分散してブランドの強みが曖昧になる可能性も考慮が必要です。
- サブドメイン: コストを抑えつつ、ある程度の独立性も欲しい場合に選択肢となります。しかし、SEO的にはメインドメインの恩恵を直接受けにくく、ゼロからのスタートになることを理解しておく必要があります。
- 新規ドメイン(独立サイト): 新規事業の独立したブランドを強く確立し、将来的に大きく成長させたい場合に最もおススメです。既存事業の影響を受けずに、新規事業に最適化されたSEO戦略を展開できるため、長期的な視点で見ると大きな可能性を秘めています。
新規ドメイン・独立サイトが未来を拓く
もし貴社が、新規事業を既存の枠に留まらず、独自の市場で大きく育てていく方針であれば、新規ドメインでの独立サイト構築を強くおススメします。これは、事業のアイデンティティを明確にし、特定のターゲットに深く響くマーケティングを展開するための基盤となります。
ただし、独立サイトの場合、立ち上げ当初は独自のSEO戦略が必要になります。そのため、SNSでの積極的な拡散、効果的なインターネット広告の活用、既存サイトからの戦略的なリンク、そして既存顧客へのメール案内など、SEO以外の多様な方法で初期のアクセスを集める計画も並行して立てておくことが成功の鍵となります。
このように、ドメインやホームぺージの設置場所についてもメリットやデメリットを考慮しながら決定していく必要があります。
どのような事業内容で、どのようなターゲット層にアプローチしたいのか、具体的な目標などをお伺いできれば、より最適なホームページのあり方についてご提案できますのでお気軽にご相談ください。