
先日、SEOの第一人者・住太陽さんのセミナーに参加してきました。テーマは、AIが検索を変える時代における新しいSEO戦略、いわゆる「ゼロクリック検索」への対応です。

住さんによると、「キーワードを単語で並べて検索する」のはインターネット黎明期から使い続けてきた中年層に特有の習慣で、スマートフォンやAIスピーカーから入った若い世代やシニア層は、最初から自然な言葉で話しかけるように検索しているといいます。キーワード検索が“全員の当たり前”だった時代は、実はそれほど長くないのかもしれないですね。
企業の情報発信の在り方そのものを問い直す内容で、非常に学びの多い時間でしたので、私の意見も交えてレポートします。
なぜ「自社で一生懸命書く」だけでは足りないのか
まず前提として、「ゼロクリック検索」について簡単に説明します。
これは、ユーザーが自然な言葉で質問を入力すると、検索エンジンのAIが直接回答を生成して表示する仕組みのことです。ユーザーはわざわざリンクをクリックして個別のサイトを訪問しなくても、その場で「答え」が手に入ります。
この変化の中で、住さんが最初に強調されていたのが「AIは主観的な判断をしない」という点です。
住さんはその本質をこんな言葉で説明されていました。
「AIはラーメンを食べることができません」
AIにはお腹も味覚もない。
だからこそ、「実際に食べた人間がどう感じたか」という証拠をウェブ上から必死に探している──という住さんの説明が、非常に腑に落ちました。
その結果として何が起こるか。
自社サイトで「うちの商品が一番です」と書いても、AIはそれをおすすめの根拠として使いません。
AIが信頼するのは、企業の自己アピールではなく、顧客や専門家など「独立した第三者の声」なのです。
一生懸命コンテンツを書くことが無駄だという話ではありません。
ただ、力を注ぐ方向を間違えると、努力が空回りするということです。
では、自社では何をすべきで、外部には何を求めるべきなのか。
自社サイトに書くべきは「客観的な一次情報」
AIの時代において、自社サイト(一次情報)の役割は明確に変わります。
「おすすめ」「すばらしい」といった主観的な評価は第三者に任せ、自社サイトではAIが最も信頼する「客観的なデータ」を確実に整えることが優先事項になります。
住さんが挙げていた具体例は以下の3つです。
① 製品・サービスの仕様
価格、納期、寸法、重量、材質、性能など。
スペックに関しては、公式サイトが発信する情報がAIにとって最も信頼できる一次情報源です。
② 会社情報
名称、所在地、電話番号、許認可、設立年など。
基本情報をきちんと整備しておくことが、AIに正確に認識してもらうための土台になります。
③ 事例・サポート情報
返品・返金ポリシー、配送条件、保証内容、そして導入事例など。
この中で特に重要なのが「事例」です。
ただし、書き方に注意が必要です。
「こんなにすごいものを作りました」「こんな実績があります」という自慢話は不要です。人間もAIも、課題を抱えて検索します。
だからこそ、「お客様がどんな課題を持っていたか」「それをどのように解決したか」というプロセスを具体的に書くことが大切です。
同じ悩みを持つ人が検索したとき、その事例がそのまま「回答」として引用される。
それが、事例コンテンツの本当の価値です。
住さんの書籍にも、自社ウェブサイトの重要性が下がったわけではなく、役割が変化しているという記述があります。AIにおすすめされたユーザーがより詳しく知りたくなったときに応える情報として、セミナーで触れた内容以上に多くの事例が紹介されています。
気になる方はぜひ書籍もご覧ください。
書籍のリンクは文末に紹介しています。
「書いてもらう」ための外部評価づくり
自社サイトの整備と並行して取り組むべきなのが、外部での評価・露出を増やすことです。
AIが「おすすめ」の根拠とするのは第三者の声だと先述しました。
では、その声はどうやって集めるのか。住さんの答えはシンプルでした。
「直接お願いする」
住さんはこんな例えで説明されていました。
10年通っている散髪屋や、月2回行くガソリンスタンドの口コミを、自分から進んで書く人はほとんどいない
。しかし、店主から直接「励みになるので、感想を書いてもらえませんか?」と頼まれたら──書く確率は大きく変わる、と。
この「直接のお願い」こそが、AI時代における最強のSEO対策のひとつです。
具体的には以下のような取り組みが推奨されていました。
- 購入後・来店後のサンクスメールで口コミ投稿をお願いする
- スタッフが直接声がけする
- 報道価値のある企画でプレスリリースを発信し、メディア掲載を狙う
住さん自身も、書籍を出版されたり。
さまざまなメディアへ寄稿したり、X(旧Twitter)で積極的に発信・引用したりと、自ら露出を増やす行動をされています。
セミナー内でも「本を買ったら、ぜひブログやSNSでレビューを書いてください」と参加者へ直接お願いされていました。
発信するだけでなく、自ら働きかけて外部評価を積み上げる姿勢が、これからの時代にはより一層求められます。
4. 質疑応答
セミナーの後半では活発な質疑応答が行われました。回答は有料セミナーでしたので控えさせていただきますが、もやっとしていた部分が晴れた回答でした。
Q. インセンティブを渡して大量に口コミを集めている競合がいる。真似すべき?
Q. リソースが限られた中小企業は、何から優先してやるべき?
Q. レビューを集める媒体として、noteやランキングサイトなども有効か?
Q. コンテンツ制作にAIをどこまで活用していいか?
Q. 食品など、スペックで差別化しにくい業種はどうすれば?
Q. お客様にInstagramへの投稿をお願いする際、ハッシュタグの指定などは必要か?
Q. アフィリエイトサイトなどの「まとめサイト」が減った場合、AIはどうやって情報を拾うのか?
セミナーは私以外の方の質問から得られる回答が非常に役に立ってとてもよかったです。
回答を知りたい方は住さんのセミナーに出られるか、ウェブ担当者フォーラムで連載中の「ひとりSEO担当者の疑問に答えます」シリーズに質問を送ってみるのもよいかもしれません。
質問募集中だそうです。
おわりに
セミナー全体を通じて感じたのは、SEOの話をしているはずが、最終的に行き着くのは「目の前のお客様に誠実に向き合う」というビジネスの王道だということでした。
AIが進化するほど、小手先のテクニックより「本物の信頼」が報われる構造になっていく。これは、大きな資本を持たない中小企業にとって、むしろ追い風ではないでしょうか。大手が「どこも同じ」になっていく中で、特定の分野に特化し、熱量の高い口コミを持つ中小企業は、AIから「唯一の選択肢」として推薦される可能性があります。
まず自社の客観情報をきちんと整え、目の前のお客様に喜んでいただき、その声を広げてもらう工夫を地道に続けていく。当たり前のことを、当たり前にやり続けること。
それがそのまま、AI時代のSEO戦略になっていく──そんな確信を持って帰ってきたセミナーでした。
なお、住さんはセミナーの内容をさらに深掘りした新著「AIで集客する仕組み ~クリックされない時代に選ばれるAI検索のセオリー~」を出版されています。セミナーで気になった方はぜひ手に取ってみてください。
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